3.24.2013


一昨日、3月21日は我々の業界ではかなり ビッグデー でした!!! 大興奮!

天文衛星「プランク」のチームによる研究発表が行われたのです。
NYタイムズの一面トップを飾りました。


プランクが鮮明に描きだした初期宇宙。
ビッグバンからわずか38万年後の宇宙の姿です。


宇宙誕生、ビッグバンからわずか38万年後に放たれた光は、微弱なマイクロ波として宇宙全体に満ちています。


この光は天文学では Cosmic Microwave Background (CMB)、宇宙マイクロ波背景放射 と呼ばれています。


ベル研究所で当時アンテナの研究をしていたアーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンによって偶然に発見され、彼等はその功績から1978年にノーベル物理学賞を受賞しました。


宇宙背景放射は現在、人類が直接探ることができる、宇宙からの最古のシグナルともいえるでしょう。

当時の宇宙の姿から、宇宙における物質の分布、宇宙年齢、宇宙膨張率といった、宇宙論において基礎となるパラメータが得られるのです。 いわば宇宙論におけるヒトゲノム計画に匹敵します。

2009年に打ち上げられた欧州の天文衛星「プランク」は、これまでにない精度で宇宙背景放射を観測していました。


こちらの図はプランク(Planck)とそれ以前の衛星、COBEとWMAPにより映しだされた初期宇宙の比較です。



COBE衛星(1989年打ち上げ)、WMAP衛星(2001年打ち上げ)はアメリカNASAのミッション。
Planck(2009年打ち上げ)は欧州宇宙機構ESAの衛星です。

この中で一番古いCOBE(左)は解像度が低く、細かい様子はわかりませんでした。
プランク衛星は感度、解像度ともに今までにない高さで、宇宙初期の小さな むら をこれまでにない精度で鮮明に映しだしました。この”むら”は後に銀河を形作っていく重要な種となります。

100以上もの研究機関が関わっているプランク・チームの研究結果が発表されたのが昨日。

私達研究者も数週間前からその発表を固唾を飲んで待っていたのでした。
チームの厳重な内部機密規則により、それまで我々チーム外の人に入ってくるのは  のみだったんです。

論文が29本一気に発表され、ヘッドクォーターのあるヨーロッパでは大々的な記者会見、プレスリリースが行われました。

結果、宇宙は138億年、と今までよりも一億年ほど年齢が高いことが判明。
宇宙のレシピ、すなわち宇宙を構成する物質の割合もアップデートされました。



宇宙のレシピ
(アストロアーツより)


謎の物質、暗黒物質(Dark Matter)の割合が26.8%、とこれまで考えていたよりも少し多いことがわかりました。星や惑星、ガスといった”普通”の物質は4.9%。

残りの68.3%は、これまた謎の多い、不可思議な暗黒エネルギーと呼ばれる物質です。
加速する宇宙膨張の原因とされていますが、近年発見されたばかりでまだ何もわかっていないのが現状です。


発見者である超新星の観測チームは2011年、ノーベル物理学賞を受賞しました。

ダークエネルギーの命名者である Michael Turner 博士 は私の所属する研究所、カブリ宇宙物理研究所の所長なんですよ。

一昨日は プランク・デー として私の研究所でも活発な議論が繰り広げられ、夜は研究者同士で

  プランクにより鮮明に描かれた初期宇宙を祝おう!!! 

パーティーが行われました。


こちらはパーティー先の研究者の自宅玄関。



広ーいリビングでは数値計算による銀河形成のビデオが流れていました。



そしてこちらはキャロットケーキ





プランクの高精度観測によってはっきりとわかった、宇宙ゆらぎの関数(パワースペクトル)を表しています。なんてGeek! (笑)ケーキの奥には論文もチラリと見えます。

実際に論文に掲載されているスペクトルはこちら。
キャロットケーキのスペクトル、悪くないですよね?(笑)


宇宙ゆらぎのパワースペクトル
論文はこちら

そしてこちらは、暗黒物質(Dark Matter)、普通の物質(Baryonic Matter), 暗黒エネルギー(Λ)のボトルです。
暗黒エネルギーはアインシュタインの重力場方程式で宇宙定数 Λ(ラムダ)と表されています。


左からDark Matter(暗黒物質), Baryonic Matter(普通の物質)、
そしてDark Energy, Lambda(暗黒エネルギー)のボトルです 

プランクによりわかった最新の宇宙のレシピ(組成)にしたがって、作ったのがこちらの宇宙ドリンク

ズームインしてみましょう。


暗黒エネルギー、暗黒物質、そしてバリオンの液体比率は大まかですが、プランクの研究結果に従っています。


私は最近はアルコールを飲まないので観測者に徹しましたが、ウォッカ・ベースの暗黒エネルギーでお味も悪くはなかったようです。

私の元には昨日スピルリナが到着しましたので、さっそく週末にケールや人参を使って

 まごわやさしい系・宇宙ドリンク

を作ってみようと思います♪ 


ちなみにまごわやさしい、とは め、ま、かめ(海藻類)、さい、かな、いたけ(きのこ類)、も の頭文字をさす、健康的な食生活です。


皆様も宇宙に思いを寄せながら、健康的な食生活をお送りください♪



(追記)

ちなみに、TVの雑音の約1%はこの宇宙背景放射によるノイズなんですよ。
そう聞くと、宇宙が幼い頃に放たれたこのシグナルが、身近な現象に思われませんか?
それとも単に邪魔な雑音?!(笑)


*参考文献*
アストロアーツ(日本語)
 http://www.astroarts.co.jp/news/2013/03/22planck/index-j.shtml

NYタイムズ(英語)
 http://www.nytimes.com/2013/03/22/science/space/planck-satellite-shows-image-of-infant-universe.html?hpw&_r=0

Nature(英語)

 http://www.nature.com/news/planck-telescope-peers-into-the-primordial-universe-1.12658


プランクチームが発表した論文29本(英語)
 http://www.sciops.esa.int/index.php?project=PLANCK&page=Planck_Published_Papers

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